2006年の制度改正により誕生した地域包括支援センターは、高齢者や家族の相談をワンストップで受け止めて、必要なサービスへつなぐほか、要支援や虚弱高齢者の介護予防ケアマネジメント、権利擁護事業、地域のネットワークづくり、高齢者虐待防止のための通報を受け付ける窓口など多彩な機能を持つ機関である。
それはまさに高齢者介護問題のセーフティネットとして機能すべき機関であり、地域包括ケアシステムが機能するための基盤となる機関である。
SOSが発信されていると思われる通報に対しては、電話相談で終わらずに訪問調査を行うなどの対応は普通の対応であり、特別な業務ではない。
地域には必要な苦情さえ上げられない「物が言えない市民」が大勢いることを忘れてはならない。
そもそも通報があって、そこで困難ケースと思える人の家庭訪問による調査は、地域包括支援センターの本来業務である。
高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターが、市民が頼って様々な寄せられる相談の中には、取るに足らない相談事が混じってくる。だからと言ってそれを批判してはならない。本当の困りごとを見つけるためには、取るに足らない相談事にも耳を傾けないとならないのである。それに耳をふさいでしまっては、本当の危機相談をも排除してしまうことになるのである。相談援助にとってそれは一番避けるべきことだ。
地域に目配りできないセンターに陥っているのであれば、別法人に地域包括支援センターの受託先を譲るべきである。市民からの通報に対応できない状態であるなら、「忙しすぎて通報しても対応できません」と市民に公報してしかるべき。それができないというなら、自身の仕事ぶりと、自らが所属するセンターの機能不全の状態を恥じて改善に努めるべきである。
地域包括支援センターが主管すべき、「地域ケア会議」にしても、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に困難ケースの提出を押し付けて、アリバイ作りのように大した困難ともいえないケースを検討するのではなく、地域包括支援センター職員が電話相談を受けた家庭に足を運び、その状態を確認して、こうした介護問題に悩む高齢者世帯を、地域全体でどのように支えるのかを検討すべきではないのだろうか。